I was not in love? I‘m ・・でしょ?

  
             

 印象的なイントロの曲は沢山あるけれど、10ccの「I`m not in love」はその中でも郡を抜いていることは誰でも認めるところだろう。
甘く優しい旋律を覆う理知的な独特の包容感を持つこの曲は、大好きなだけでなく当時大人になる寸前のわたしには「知ったかぶり」するのにきっとちょうどよかったのだ。
 
 当時は今と違って音楽のジャンル分けがはっきりしていて、高校時代はロックの話をする人とフォークの話をする人は雰囲気まではっきりと分かれていた。
 学校ではクリームやバッド・カンパニーの話をしていながら、スカートの裾にタータンチェックを縫い付けてベイ・シティ・ローラーズのコンサートに行くわたしは「ロック派」の中でもミソッカス的な存在で、夜部屋を暗くしてオフコースを聴いて涙するなど、そんな雑食はカッコ悪くて誰にも言えない状況だったのだから、今書いていると当時の自分に「大変だったね」と言ってやりたい気持ちになる。

 授業が終わると同時に学校を飛び出した優秀な帰宅部員だったわたしは、ある日偶然テレビで洋楽のビデオを流す番組を見つけた。それまで家ではAMラジオの深夜番組「アメリカントップ40」でしか洋楽の情報に触れられなかったのだから、音楽に画像が付いているなんて画期的だった。

 東京都下の田舎街暮らし。小遣いが少ないのに夏・冬休み以外バイトは禁止。立ち読みしようにも小さい本屋が一軒あるだけでミュージックライフも音楽専科も置いてない。まっすぐ帰宅したからといってなんにも楽しいことはない、八方塞がりだったわたしは誰もいない家で14型のブラウン管テレビの中に見える外国にすっかり夢中になった。

 ちょうどビートルズが解散後のソロで活躍していた時期で、大好きなジョージの映像を収めようとテレビに向かってシャッターをきり、何ヶ月もたって現像からかえってきた写真を見た父に「なんだ、これは」と訝しがられたという、今では笑い話にもならないことをやったこともある。
 ウィングスのCムーンは、放課後の開放感を今も頭の隅っこで再生できるほど何回も見た。

 昔過ぎてうろ覚えな記憶でしかないのがとても残念なのだが、サングラスをかけた男性DJが今でいうならJ-waveのナビゲーターばりのかっこいい発音で、それまで知らなかったスパークスやマンフレッド・マン、グランド・ファンクなんかを教えてくれた。

 そのDJが特にお勧めだと言っていたのが10ccだった。
「Art for arts sake」という曲で確か演奏している映像だった。
かっこいい曲だなと思ったが、ミーハーなわたしなんかにはかっこいいと言われたくないだろうなという近寄りがたい雰囲気をそのアーティストたちは感じさせた。
 それが心にひっかかったまま少したってから「I`m not in love」を聴いた。ラジオだったかこの番組だったかも定かではない。

 高校時代、何かに打ち込むとか拘るとかせずに楽な方にばかり流れていた自分。だから職人気質の10ccに憧れを抱いたのだろうか。
 今でも耳にするとあの頃の自分を思い出し、コンサートを観に行った中野サンプラザ前の交差点の喧騒が脳裏に浮かんでくる。

 「あの頃の自分」を思い出したとき、多くの人は「未熟な自分」に対して気恥ずかしさを覚えるのかもしれない。でもわたしは違う。あれからわたしはコツコツと何かに打ち込んだだろうか?
少しはそういう時期もあった。でも今も10ccを聴いて未熟な自分を思い出して恥ずかしいのは、今もまだあの頃と変われずに自分が未熟なままだからだ。


 そんな曲がFPMによって「I was not in love」になって甦り、J-waveからたびたび不意打ちで聞こえてくるから堪らない。イントロが聞こえた瞬間、こっちが雑巾がけをしていようと、大根の皮を剥いていようとお構いなしに中野サンプラザの前に連れて行かれ、「今まで何をしてきたのかな~」と考えさせられることになる。その度ちょっと落ち込むし。
でもいい曲はいい曲に生まれ変わるんだな~とも思う。ボーカルのホソミタケシの歌も好きだ。
 

 こんなタイミングで高校から同窓会便りがきた。見覚えのある名前がクラス毎に列記され所在不明者となっている人の所在を知っていたら教えて欲しいと書いてある。その中にすでに亡くなった友人の名前を見つけて「そうか、亡くなったことはわざわざ知らせないもんな」と当たり前のことを認識し、探している同窓会役員には「ごくろうさま」とは思うが今から遥か昔に一員だった高校の属性に入る意味をまったく感じられない自分は所在不明者でよかったのになというのが正直なところだ。
 
 そんなことを思いながら名前を辿っているとショーヘイさんを見つけた。秀才肌の彼は一見カタブツそうに見えて実は音楽通で話しやすい人だった。なんの話をしていても最後には彼の敬愛していたナザレスに話を持っていくのが御愛嬌だったっけ。
あのくらいひとつのことに熱心になれた人は、あの後も何かに集中して今頃は何がしか成し遂げたのかもしれないな。


黒縁メガネのショーヘイさんにもっと感化されていたら、もっとふんわりと10ccを受け止める50代になれたかな。なんて思う。







 





 
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櫟コナラ

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家にいる時は、音楽かラジオをかけて、パンを作ったり、ネコと戯れたり。
うまく子離れしている・・つもりなんですが・・・。

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